南九州(宮崎・鹿児島)に伝わる弦楽器「ごったん」を製作しています。別名 箱三味線、板三味線とも言われています。50年~100年の古民家のスギやヒノキの柱や梁等を使って製作しますが、古い農家の囲炉裏の煙で燻されたスギの梁が最適だそうです。
宮崎県南部地方を含む旧薩摩藩では、明治初年までの約300年間に及ぶ一向宗(浄土真宗)の信仰を禁制としました。
民衆は「隠れほら穴」等を作り、その中で信仰を捨てずに続けて行きました。かくれ念仏洞が発見される度に、激しい弾圧と拷問の日々が続きました。そんな中、民衆の知恵によって念仏を唱える唄の伴奏楽器として「ごったん」が誕生し、都城地方で広まり、明るい場所で念仏を唱えるようになりました。
生き物を殺生せずに板張りで製作するごったんは、先人達の喜びや悲しみが込められ、長く遠い道のりを生きていく為の生活の道具の一つでした。
ごったんは現在、贈答品や飾り物としても幅広い年齢層の方々に好評です。平成19年3月に県の伝統工芸品に指定され、現在は県伝統工芸士黒木俊美氏の愛弟子、上牧正輝氏が製作しています。